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耐久性と分解性を兼ね備えた木材廃棄物から作られたバイオプラスチック

製材所の廃棄物とグリーンソルベントだけで、シンプルでサステナブルなプラスチックフィルムを作ることができる

文:Prachi Patel

2021年4月1日

(Click here for the original English version)

プラスチックの再生可能性を追求する競争が加速する中、コーンスターチ、サトウキビ、ジャガイモ、コーヒーかす食品廃棄物藻類などを原料とするバイオプラスチックが開発されてきました。今回、研究者たちは、より強く、より安く、より持続可能な代替品になる可能性があるという廃木材の粉末を使った新しい方法を開発しました。

Nature Sustainability誌に掲載されたこのバイオプラスチックは、強度が高く、劣化せずに液体を保持し、紫外線によるダメージにも耐えることができます。加えて、使用後は完全にリサイクルすることができ、生分解も可能です。

海や陸で増え続けるプラスチックが環境に与える影響が明らかになるにつれ、科学者たちは石油由来のプラスチックに代わるものを作ろうと躍起になっています。しかし、安価で強く、水に強く、尚且つ使い終わったらすぐに分解されるバイオプラスチックを作るのは難しいとされています。

例えば、市販されているバイオプラスチック製のカトラリーは、埋立地や自然環境の中で石油由来のプラスチックと同じように長く残留します。一方、1回の使用で分解されるように設計されたバイオプラスチックは、熱や日光に強くない可能性があります。さらに、バイオプラスチックの製造には毒性のある化学物質や複雑な加工工程が必要になることもあります。例えば、最近報告された木材とクモの糸から作られたプラスチックの代替品は、木材パルプを加工し、人工的に作られたクモの糸のタンパク質と混ぜ合わせる必要があります。

この論文の中でイェール大学とメリーランド大学の研究者たちは「天然の豊富な資源を使い、シンプルで持続可能な方法でバイオプラスチックを開発することが重要で、また廃棄される際には生分解可能で、使用中は強く長持ちする製品である必要がある」と述べています。

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研究チームが開発した木材由来のプラスチックは、これらのニーズをすべて満たすかもしれません。製造プロセスは製材所の廃棄物である木粉から始まります。木材は、細胞壁を形成するデンプン質の繊維であるセルロースとヘミセルロース、そしてそれらを接着するポリマーであるリグニンの3つの成分から構成されています。

リグニンを溶かす緑色の溶剤に粉末を混ぜて、セルロース繊維の結合を破壊します。そしてヘミセルロースを除去すると、セルロースとリグニンの濃厚なスラリー(泥漿)が出来上がります。リグニンはセルロース繊維の3次元ネットワークの内部の空間を埋めています。

研究チームは、このスラリーを簡単なキャスティングプロセス(鋳造プロセス)を用いて固体のバイオプラスチックフィルムにしました。このフィルムは、バッグや包装材などに利用できます。また、水の中で機械的に分解して再利用可能なセルロースとリグニンのスラリーにすることで簡単にリサイクルできます。土に埋めると微生物によって分解され、3カ月で完全に消滅します。

イェール大学で産業生態学と持続可能なシステムを研究しているYuan Yao教授は、「このプラスチックが本当に優れているのは、リサイクルや生分解が可能な点である。私たちは自然界に排出されるすべての材料と廃棄物を最小限に抑えている」と述べています。

出典: Qinqin Xia et al. A strong, biodegradable and recyclable lignocellulosic bioplastic. Nature Sustainability, 2021.