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ソーラーパネルで覆われた灌漑用水路は強力な組み合わせ

再生可能エネルギーの生成、何十億ガロンもの水の節約、そして農家からのCO2排出量の削減、これらすべてを同時に実現するシンプルな方法。

文: Sarah DeWeerdt

2021年3月23日

(Click here for the original English version)

カリフォルニア州の灌漑用水路をソーラーパネルで遮光することで、ディーゼル式の灌漑ポンプによる汚染を軽減するとともに、干ばつが深刻化している同州で年間25億立方メートルの水を節約できる可能性があることが新しい研究でわかりました。

インドでの試験的な研究や小規模なシミュレーションにより、いわゆる「ソーラー運河」には多くの潜在的なメリットがあることがわかっています。ソーラーパネルで水を遮ることで、蒸発による水の損失を抑え、水生雑草の繁殖を抑えることができます。さらに水が冷涼な微気候を作り出し、ある一定のソーラーパネルの効率を高めます。また灌漑設備と再生可能エネルギー設備を組み合わせることで、スペースを有効に活用し、農業や自然景観への負担を軽減することができます。

研究チームのメンバーであるカリフォルニア大学マーセド校の Roger Bales教授(工学)は、「この方法は様々な気候や景観に適用できる」と指摘しています。加えて、特に乾燥した日照時間の長い地域では、土地利用において競争が激しくなるため、魅力的なものになる」とも指摘しています。

しかし、これまではこのアプローチをどのように拡大できるかは明らかではありませんでした。そこでBales教授らは、世界最大の水輸送システムであるカリフォルニア州の6,350kmに及ぶ灌漑用水路網にソーラー運河を適用した場合の可能性を分析しました。

研究者らは3つの異なる方法を用いて、用水路網から年間どれだけの水が蒸発するかを推定しました。遮光の効果に関する過去の研究に基づき、用水路の上にソーラーパネルを設置した場合、1キロメートルあたり年間39,000立方メートルの水を節約できるとNature Sustainability誌に報告しています。

研究チームはまた、3種類のソーラーパネルの配置について経済分析も実施しました。3種類とは、標準的な地上設置型、またインドのパイロットプロジェクトで試行されたスチール製のトラスを使用したものとサスペンションケーブルを使用したものの2種類の運河上に設置するデザインです。

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当然のことながら、地上設置型のパネルは運河上設置型に比べて設置費用が安く済みます。しかし、節水、発電量の増加、土地代の削減、水生雑草の手入れの削減などを考慮すると、ケーブル敷設型ソーラー運河のデザインの方が優れています。研究者らの計算によると、従来の地上設置型のソーラーパネルに比べて、ケーブル敷設型のパネルは20~50%ほど投資効果が多くなっています。

研究者たちは、「水コストの回避に加えて、水路上のソーラー運河による節水のメリットは、農業生産のレジリエンスを高める可能性がある」、「例えば、節約された水は地下水の汲み上げ量や、地表水の不足に対応するために畑を休耕することを減らすことができる可能性がある」とも書いています。

カリフォルニア州の農業地域にある多くの農場では、ディーゼルポンプを使って灌漑用水を汲み上げ、土壌にダメージを与える可能性のある塩分を含んだ流出水をポンプで排出しています。研究者らの計算によると、運河上のソーラーによる1メガワット毎に、農家は15〜20台のディーゼルエンジンを取り外すことができます。その結果、粒子状物質や窒素酸化物の汚染が減少し、CO2の排出量も削減されることになります。

「運河をソーラーパネルで覆うことは、再生可能エネルギーへの移行を促すための魅力的で、尚且つ複数のメリットがある選択肢である」とBales教授は言っています。「実現可能であることが実証されたので、次のステップはプロトタイプのプロジェクトと、カリフォルニア州および米国西部の何千マイルもある運河でのより詳細なエンジニアリング評価と計画である」と述べています。

今回の研究を支援したサンフランシスコの社会的影響力のある機関であるCitizen Groupは、現在、カリフォルニア州でソーラー運河の実証プロジェクトを行う場所の特定に取り組んでいます。

出典: McKuin B. et al. “Energy and water co-benefits from covering canals with solar panels.” Nature Sustainability 2021.

画像: University of California, Merced.