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足音で発電する木の床が家を照らす日がくるかもしれない

再生可能な建築材料を再生可能エネルギーに変える方法を研究者が見つける。

文:Prachi Patel

2021年3月24日

(Click here for the original English version)

木材から電気を生成する新しい方法では、人の足音からエネルギーを確保し、建物の照明やディスプレイに電力を供給することができる可能性があります。シンプルで低コスト、かつ環境に優しいこのプロセスは、カビを使って木材を腐らせ、弾力性を持たせることで、圧迫された際に発電する新しい方法としてScience Advancesに掲載されました。

人類が使用した最古の建築材料の一つである木材は、その低コスト性と持続性から、今でも価値のある建築材料とされています。また木材には機械的に変形させると電力を発生する性質である圧電性があることが何十年も前から知られています。

しかし天然の木材は非常に硬く、あまり圧縮できないため、圧電発電の出力は非常に小さくなります。そこで、チューリッヒ工科大学のIngo Burgert氏とスイス連邦材料試験研究所(Empa)のJavier Ribera氏を中心とする研究チームは、木材を化学的に加工して弾性を持たせることで圧電出力を55倍に高めることに成功しました。

このプロセスでは木材の3つの主要成分の1つであるリグニンを除去します。リグニンは天然のポリマーで、他の2つの成分である炭水化物のセルロースとヘミセルロースをつなぎ、木材の強度と剛性を保っています。

リグニンを除去し、木材を発泡スチロールのような白い素材にしたり、透明にしたりすることは研究者によってこれまでにも行われてきました。また、これまでの手法では刺激の強い化学薬品を使用していました。

今回の研究では、より穏やかな手法を用いています。白色腐朽菌を使ってバルサ材を意図的に腐らせ、菌は木材中のリグニンとヘミセルロースを分解し、約6週間後には木材の重さを半分近くにまで減らします。

実験では、サイコロサイズの弾力のある木材から出来た立方体を500回繰り返し押しつぶすことで小さなセンサーに十分な電力である0.87Vの電圧が発生しました。研究者たちは、将来、様々な建物での実用化を実証するために、この立方体を9個つなげて、2枚の薄い木のベニヤで挟みました。これを手で繰り返し圧縮することでLED電球を点灯させることができました。

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今回の研究では、再生可能で持続可能な方法で加工された素材を使って、「室内での様々な活動によって、人が自ら電力を生み出す能力を活用し」エネルギー効率の高い建物を設計することが可能であることを示していると研究者たちは書いています。

出典: Jianguo Sun et al. Enhanced mechanical energy conversion with selectively decayed wood. Science Advances, 2021.

写真:Martin May on Unsplash