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循環型の廃棄物管理:見過ごされているが強力な気候変動対策となる

ゴミは人為的なメタン排出の8%を占めているが、最近の分析によると、循環型廃棄物管理に切り替えることで、2050年までにゴミからの排出量を88%も削減できることがわかりました。

文:Sarah DeWeerdt
2022年1月18日
(Click here for the original English version)

新しい研究によると、物の捨て方を変えるだけで、現在年間1億5千万トンを排出し、大気汚染の原因となっている二酸化炭素を2050年までにほぼ取り除くことができるという。

世界人口の増加や富裕化に伴い、ゴミの量は年々増加しています。世界のゴミの量は2015年から2050年の間にほぼ倍増する可能性があります。

しかし、そのゴミはあまり効果的に管理されていないことがよくあります。リサイクルされているゴミは全体の約13%、コンポストされているのは5.5%にすぎません。低所得国では、ゴミは管理されていないゴミ捨て場に捨てられたり、外に散乱していたり、野外で燃やされたりすることがよくあります。

ゴミは、大気汚染、水質汚染、温室効果ガスの排出など、さまざまな環境負荷を引き起こします。しかし、気候変動に関する議論において、ゴミの管理は見落とされがちです。

そこで研究者らは、ゴミが将来的に気候に与える影響と、その影響を最小限に抑える方法を知るために、184の国々と地域、農村部と都市部の両方を対象に、ゴミ管理に関するデータを収集しました。研究者や政策立案者が今後数十年間に世界経済がどのように発展するかを予測するためによく使用する「共有社会経済経路(SSP:Shared Socioeconomic Pathways)」と呼ばれる一連のシナリオを用いて、将来的に発生するゴミの量とそれに伴う温室効果ガスやその他の汚染物質の量を推定しました。

研究者たちは、世界の廃棄物管理システムが多かれ少なかれ現状のままである場合のゴミの影響を分析することに加え、異なる発展シナリオにおいて循環型廃棄物管理システムを導入した場合の影響も検証しました。

循環型廃棄物管理は、何よりもまず、物質の再利用とリサイクルを促進する技術と政策に重点を置いています。リサイクルできないものはハイテク焼却炉で燃やしてエネルギーを生み出し、埋立地は最後の手段として利用します。

研究者らは、循環型廃棄物管理シナリオとして、2050年までに世界のすべてのゴミの回収を達成し、紙と繊維ゴミの90%、プラスチックと木材の80%をリサイクルし、生ゴミは100%、バイオガスを生成してエネルギーにする嫌気性消化槽に送られると想定しました。

世界が公平かつ持続可能な方法で発展するシナリオは、汚染が発生した後の対処を技術の進歩に依存するシナリオよりも、廃棄物が環境に与える影響をより大幅に、より早く軽減できる可能性があると研究者はNature Communications誌で報告しています。研究者らは、持続可能かつ公平な発展に向けた道筋に循環型廃棄物管理を加えることで、最良のシナリオが得られることを明らかにしました。

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ゴミは現在、人為的なメタンの排出の8%を占めています。メタンは強力な温室効果ガスです。現在の廃棄物管理方法が続くと、2050年には13%に増加すると研究者は予想しています。しかし、最良のシナリオでは、2050年にはゴミからのメタン排出量を、現状の廃棄物管理のままである場合と比べて88%削減できる可能性があります。

これらのメタン排出の多くは、埋立地でのゴミの分解から発生します。この最良のシナリオでは、2030年に埋立地に運ばれるゴミの量を、通常の場合と比較して91%削減することができます。メタンガスの分解と排出は遅れて発生するため、迅速に削減することが重要です。研究者らは「今日の埋め立てゴミが明日のメタン排出につながる」と指摘しています。

低所得国では、廃棄物管理システムがしっかりしていないことが多く、かなりの量のゴミが焼却され、二酸化炭素やその他の大気汚染物質を放出しています。ゴミの焼却は現在、年間約1億5千万トンの二酸化炭素を排出し、世界のブラックカーボン排出量の6%を占めています。循環型廃棄物管理によって、「2030年には野外焼却を実質的に排除することが可能となり、その結果、この大気汚染の原因をなくすことができるだろう」と研究者は報告しています。

低所得国では廃棄物管理を改善するためにコストが障壁となることがよくあります。この研究の主執筆者であるオーストリア、ラクセンブルグの国際応用システム分析研究所(International Institute for Applied Systems Analysis:IIASA)のAdriana Gómez-Sanabria研究員は、「循環型廃棄物管理によりゴミの量を減らすことができ、その結果コストを削減し、より良い廃棄物管理を身近なものにできる」と指摘しています。

このような管理を実施するには、新しい法律や政策、能力開発、富裕国から低所得国への資金援助が必要です。そして一人一人の行動が必要になります。「私たちが行動に移せることとしては、消費量を減らし、その結果、発生する廃棄物を減らすことだ。循環経済にはリサイクルも重要だが、まずは再利用を考えるべきだ」とGómez-Sanabria研究員は指摘しています。

出典: Gómez-Sanabria A. et al. “Potential for future reductions of global GHG and air pollutants from circular waste management systems.” Nature Communications 2022.