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エンジニアが夜間でも発電できる太陽電池を開発

夜間にLED電球の点灯や携帯電話の充電ができ、高価なバッテリーの必要性がなくなる可能性があります。

文:Prachi Patel
2022年4月21日

太陽光発電の大きな制約の一つは太陽が沈むとソーラーパネルが機能しなくなることです。スタンフォード大学の研究者らは、今回その制約を克服しました。市販の太陽電池に手を加えることで、携帯電話の充電やLED電球の点灯に必要な電力を夜間に作り出すことができる太陽電池を作ることに成功したのです。

この研究成果をApplied Physics Letters誌に発表した電気工学科のShanhui Fan教授は、「太陽電池の時間的な動作範囲を真に拡大したかった」と語っています。

太陽電池はシリコンなどの材料でできていて、太陽光を吸収して電荷キャリアを生成し、電流を流すことができます。また、日中は太陽光を吸収して暖かくなります。そして夜、暗い空になるとその熱を宇宙空間に放射します。この現象は放射冷却と呼ばれ、研究者はこれを利用して、太陽光を反射する塗料材料建物の冷却システムなどを作ってきました。

Fan教授らはこの現象を利用して、2019年にLED電球の点灯に十分な電力を発生させる装置を開発し、報告しています。彼らは今回、このアイデアを太陽電池と統合させました。

Fan教授らは、市販の熱電発電モジュール(温度差で発電する装置)を、シリコン太陽電池の下側に取り付けました。夜間、太陽電池が熱を放射すると、その温度は周囲の空気より数度低くなります。これにより、太陽電池側は冷たく、空気側は熱いという温度差が熱電発電モジュールに生じます。

スタンフォード大学の屋上で行ったテストでは、この装置は1平方メートルあたり平均50ミリワットを発電しました。Fan教授は、日中の太陽電池の発電量が1平方メートルあたり100ワットであることに比べれば発電量が多いわけではないが、非電化地域や低資源地域でのバックアップ電源としては十分だろう、と指摘しています。さらに、日中に発電した太陽光をバッテリーで蓄電するよりも、低コストで長期的に活用できる可能性があります。

Fan 教授によれば、断熱材と熱電装置をさらに改良し、太陽光の吸収能力を犠牲にすることなく、より多くの熱を放射するように太陽電池を設計すれば、このシステムからより多くの夜間電力を発電できると言っています。理論的には、1平方メートルあたり1ワットまで可能です。

「太陽は、驚くほど豊かな再生可能エネルギー資源である。しかし、太陽がない暗闇の空も、再生可能エネルギーにとって非常に興味深いものであることがわかる」とFan教授は指摘しています。

出典: Sid Assawaworrarit, Zunaid Omair, and Shanhui Fan. Nighttime electric power generation at a density of 50 mW/m2 via radiative cooling of a photovoltaic cell. Appl. Phys. Lett., 2022.