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絶滅を避けるため集中的かつ実践的な支援が半数以上の希少種に必要

世界のリーダーらは世界の生息地の30%を保護することを約束していますが、多くの絶滅危惧種にとってそれだけでは十分ではないと科学者らが警告しています。

文:Warren Cornwall
2022720

国際的な協議では絶滅の危機を食い止めるために何をすべきか議論していますが、その議論は主にどのくらいの生息地を保護するかに焦点が当てられています。しかし、最も絶滅の危機に瀕している多くの動物にとって、生き残るためには生息地を確保するだけでは不十分です。

自然保護科学者のチームによると、希少種の半数以上は、動物園での繁殖、野生環境における追加の給餌、空き地への移動、病気に対するワクチン接種など、集中的かつ実践的な支援を必要としているといいます。

「この研究は特定の地域を保護するだけでは種の絶滅を防ぐことはできないことを示している」と、バードライフ・インターナショナルの主任科学者で、今回の研究に参加したStuart Butchart氏は述べています。

この調査結果は、生物種の保全に関する主要な国際協定である国連生物多様性条約に関する締約国会議がモントリオールで開催される5カ月前を前にして発表されたものです。

自然保護論者や一部の世界的な指導者らは、生物種の生息地として地球上の陸地と海の30パーセントを保護するよう働きかけており、このことが大きな注目を集めてきました。しかし、Butchart氏や他の科学者らは、生物種が生息する場所の保護と復元に注力することが、最も危機に瀕している生物にとって十分であるかどうかということを精査したいと考えました。

Butchart氏は、6つの大陸から集まった17名の自然保護科学者から成る、国連のような研究チームに参加しました。彼らはまず、国際自然保護連合(IUCN)が管理する絶滅危惧種のリストを確認しました。一般に「レッドリスト」として知られるこのリストは、地球上の絶滅危惧種を網羅した最も権威のあるものとされています。科学者らは、37,000種以上あったリストを、特に絶滅の危機に瀕していると思われる7,784種に絞り込みました。両生類(2,444種で最多)からカブトガニ(2種)まで、さまざまな種類の生物が含まれています。

そして、これらの生物が直面する主な脅威についてIUCNが記述したものを詳細に調べ、20217月に発表された保護協定の最新草案に明記されているさまざまな行動と照らし合わせていきました。そのうちの7つの目標は、生息地の回復と保護、汚染や野生動物の過剰消費及び外来種の蔓延を抑制するための公約を中心に据えています。

研究者らは学術誌Frontiers in Ecology and the Environmentで、最終的にはこれらの目標では、絶滅危惧種の57%が直面しているすべての脅威に対処することはできないと報告しています。

この研究に参加し、自身も絶滅の危機にある鳥類を研究する英国ニューカッスル大学の自然保護科学者Philip McGowan氏は、「土地や海の利用方法の変化、乱獲、汚染、外来種、気候などによる脅威を減らすための政策や行動によって、多くの生物が恩恵を受けるだろう。しかしこれだけでは、これらの種が直面している絶滅の危機を取り除くことはできない」と指摘しています。

このような実戦的な対策には、ほぼ常に注意を払うことで消滅を防いでいる種の集中治療室のようなものも含んでいます。野生のロードハウナナフシは、オーストラリアの一つの島に35匹も生存していません。細長いゴキブリに似たこの昆虫は、島に放たれた外来種のネズミによって絶滅寸前にまで追い込まれました。現在は数千匹が飼育され、外来生物の駆除した後に野生に戻されることが期待されています。また、230種以上のハワイの植物もリストアップされましたが、いずれも自然界には50種以下しか残っていないため、保護活動家は苗床で栽培することを余儀なくされています。

(左:ロードハウナナフシ、右:バリミナ)

バリミナは、希少種を救うために科学者が行っていることを示す鳥です。インドネシアに生息するこの鮮やかな白い鳥は、鳥の収集家たちによってその数を減らされ、今では50羽以下しかいません。1999年には放鳥間近の飼育鳥、39羽が武装した盗賊に奪われたこともありました。残された鳥が生存する国立公園内では、現在でも罠をしかける猟師が活動していると思われます。この種を存続させ、森に新しい鳥を安定的に供給するために、現在、動物園を含む170の保護区で1000羽近くが飼育されています。

先日、科学者らは飼育されている鳥の性格検査を行い、どの鳥が野生で最も生存できる可能性があるのかということを調査する新しい研究を発表しました。研究者らは、22羽の飼育されているマイナバードを撮影し、見慣れないものが近くにあるときに餌に近づくまでかかった時間を測定し、その鳥がどの程度恐怖心を抱いているかを調べました。また、樹皮やプラスチックのカバーで覆われたおいしいミミズをどのように狙うかということによって、それぞれの鳥がどの程度新しい問題を解決する能力があるのかということも調べました。

全体として、一部の鳥は常に新しいものに近づいたり、餌のパズルを素早く解いたりする傾向があり、恐怖心の無さと問題解決の速さが相関していることがわかりました。英国アングリア・ラスキン大学のRachael Miller氏は、「これらの鳥の行動の柔軟性に関するデータが得られたので、どの鳥が再導入に適しているのかがわかる」と述べています。

一羽の鳥にとどまらず、絶滅の危機に瀕した多くの種のニーズを精査している科学者らは、彼らの研究結果が2021年の交渉ラウンドで生物多様性条約に追加された条項を保護することが重要であることを示していると述べています。この条項は、種を助けるために飼育下繁殖を含む「積極的な管理行動」を各国が確保する必要があると指摘しています。研究者らは、この目標を維持することは他の目標とともに「極めて重要」であると書いています。

出典:Bolam, et. al. “Over half of threatened species require targeted recovery actions to avert human-induced extinction.” Frontiers in Ecology and the Environment. July 18, 2022.