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木から衣服を作ることは食糧安全保障と環境の両方にとって良い結果をもたらす

ポプラの新品種は、ヨーロッパの綿花栽培の大部分を代替できるほどの繊維を作り出します。さらに、綿花栽培に使われている土地を他の用途に活用できるようになります。

文:Emma Bryce
2022年9月2日

成長を維持するために持続不可能な量の水や化学物質と肥料を必要とし、私たちに食料を提供しない作物は世界中で見られます。それは綿花で、世界中の3,450万ヘクタールの耕作地を覆っています。

スウェーデンの研究チームは、この綿花の一部を成長の早いポプラの木に置き換え、それから繊維を作れば何百万ヘクタールもの綿花栽培地を解放し、代わりに食料を栽培することができると提案しています。

さらに、新しい処理方法を用いれば、ポプラの木全体を利用し、残った木材から燃料となるバイオオイルを抽出することも可能であることを明らかにしました。研究チームはまた、ポプラの森は成長するにつれて炭素を吸収するとJoule誌に報告しています。

綿花1トンを生産するのに2,955m3の水が必要となり、またその過程で肥料などの化学物質が淡水域に流出し、下流の富栄養化を引き起こすなど膨大な汚染が発生します。化学物質をほとんど使わずに栽培されるオーガニックコットンは、解決策のひとつです。しかし、現在、世界の綿花生産のわずか1%を占めるにすぎず、生産にはより多くの土地を必要とします。

そのため、木材のセルロースを原料とするビスコースやリヨセルなど、よりサステナブルな繊維への需要が高まっています。

ポプラはセルロースの原料となる樹木で、綿花のように人工的な介入を必要としません。そこで研究者らは、この生産性の高い樹種が綿花に取って代わるだけでなく、資源や土地の節約につながるかどうかということに注目しました。

まず、バルト海沿岸の国々(スウェーデン、ポーランド、ドイツ、リトアニア、ラトビア、エストニア、ロシア、デンマークの一部)を対象に、ポプラ栽培に適した北欧の未耕作のマージナルランドを調査しました。マージナルランドとは、林地に指定されていない土地で、アクセスが悪かったり、砂質土壌のため収穫量が少なく、農業に適さない土地のことです。

研究者らは、農業と競合することなくポプラを栽培できる土地として、これらの国々で土地全体の3%弱である460万ヘクタールのマージナルランドを特定しました。

そして、ポプラの木がこの地域でどれくらいのバイオマスを生産できるかをモデル化しました。ポプラの木の中でも特に注目したのは、北部の極寒の地でも生産できるよう、気候変動に強い特性を持つ2つの(SnowTigerとOP24と名付けられた)ポプラのクローンです。

研究者らは、木材パルプを繊維や糸にするための「還元触媒分別」と呼ばれるより効率的な抽出方法の可能性も探りました。この方法では、セルロースを繊維に加工した後に残る50%の木材から副産物として油を抽出し、それをバイオ燃料の原料にすることも可能になります。

研究者らは2種類のポプラの成長データを用いて、バルト海沿岸諸国の広大なマージナルランドで、これらの木から毎年1ヘクタールあたり2.4トンの繊維状パルプを生産することができると計算しました。45年間でポプラの木を2回輪作すると、1ヘクタールあたり216トンのビスコース繊維ができることになります。

このことは綿花栽培にとってどのような意味を持つのでしょうか。研究者らは、このレベルの生産量であれば、バルト海沿岸諸国の綿花生産地の42%を他の用途に解放できると考えています。

さらに、ポプラは副産物として燃料も抽出できます。研究者らが開発した木全体を使った加工方法により、枝や樹皮の副産物は発電用の燃料として利用でき、触媒を用いた抽出プロセスにより、年間314,834トンのバイオ燃料を生産できるのです。

また、ポプラの木は綿花のように大量の肥料や化学薬品、水を使わなくても育つので、環境負荷も軽減されます。さらに木が炭素を吸収する能力を考慮すると、ポプラから生産されるビスコースは綿花よりも全体的な排出量が少なく、例えばスウェーデンでは通常の綿花(木綿)生産よりも約2.4%少なくなっています。ポプラのクローンを開発したスウェーデン農業科学大学の研究者、Anneli Adler氏は、「ポプラのような成長の早い木は、20年以内に収穫可能な量の木材を生産するため、CO2の蓄積も早い」と述べています。

この排出量の削減は、予想よりも低い可能性もあります。ドローダウンのメリットが、木の副産物の燃焼や、研究者がライフサイクルアセスメントの一環として計算に含めたビスコース生地自体の生産で発生する排出量によって一部相殺されてしまうためです。

しかし、ポプラから作られた糸がもたらす利点は排出量だけではありません。ポプラの森には野生動物が生息する可能性もあります。さらに、農地に作物を植えればアグロフォレストリー(森林農法)を実現し、衣料用セルロースの生産量を増やすことができます。

非常に大きな可能性があります。研究者らは特定の国々に焦点をあてて分析しましたが、ヨーロッパ全体で4300万ヘクタールのマージナルランドがあり、そこにポプラを植林すれば綿花栽培に使われている広大な農地が他の用途に使える可能性があると計算しています。

このように、木から衣服を作ることは食糧安全保障と環境の双方において思いがけない勝利をもたらす可能性があるのです。

出典:Samec et. al. “Lignin-first biorefining of Nordic poplar to produce cellulose fibers could displace cotton production on agricultural lands.” Joule. 2022.