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小型デバイスによる解析は大規模な炭素貯留をサポートする

ラボオンチップが岩石中でどのようにガスが化学反応を起こすのか、高時間分解能とスケールで明らかになりました。

文:Prachi Patel
2022年8月11日

地球温暖化による壊滅的な被害を防ぐために、国連などの機関は二酸化炭素を閉じ込め、貯留する技術を緊急に拡大するよう呼びかけています。

そのためには大量の二酸化炭素を回収し、地下の岩盤に注入しなければなりません。しかし、このプロセスの長期的な有効性と信頼性についてはまだよくわかっていません。

スタンフォード大学の科学者らは、地下への大規模な貯留の影響を評価するために小さな装置に注目しました。これはラボオンチップ、あるいはマイクロ流体デバイスと呼ばれ、物質の物理や化学を微視的スケールで研究するためによく使われるものです。研究者らは現在、この装置に頁岩(けつがん)の微小片を入れ、ガスや酸にさらされたときに岩石がどのように反応し、変化するかということについて研究しています。

Proceedings of the National Academy of Sciences誌に掲載されたこの研究の結果は、特定の地質場所に貯留された二酸化炭素、その他のガスや廃棄物がどのようになるかということを評価するための情報になります。

炭素回収と貯留は世界中で増加しており、すでに30の大規模プロジェクトが稼動しており、少なくともその3倍が計画されています。これらのプロジェクトのほとんどは、塩水帯水層や油性・ガス井に温室効果ガスを閉じ込めています。

スタンフォード大学のエネルギー資源工学の教授で、今回の研究を率いたIlenia Battiato氏は、「岩盤に注入すると複雑な地球化学反応が起こり、中には予測困難な岩盤の劇的な構造変化を引き起こす可能性がある」と述べています。

科学者は通常このような変化を予測するためにコンピュータシミュレーションを使用してきました。しかし、これらのモデルは必ずしも正確なメカニズムを理解しているとは限りません。現実には1秒も続かない反応もあれば、何年も続く反応もあります。さらに、継続的な化学反応によるさまざまな鉱物の生成や、岩石表面の形状や化学的性質の変化なども、すべて反応に影響を及ぼします。

スタンフォード大学の研究チームは、この地球化学反応の進化を直接かつリアルタイムで理解するために、ウエストバージニア州のマーセラス頁岩とテキサス州のWolfcamp 頁岩から8つの岩石サンプルを採取しました。岩石を細かく切断・研磨した後、ガラス製の容器に入れ、小さな注入口から酸溶液を注入しました。

それぞれの岩石サンプルには、異なる量の反応性炭酸塩鉱物が含まれていました。研究者たちは、高速度カメラと顕微鏡を使って、化学反応がどのように鉱物を溶解し、再配置するか微視的スケールとサブ秒(1秒以内)のスピードで観察しました。

このラボオンチップのように岩石と化学物質の相互作用を詳細に観察することは現在の技術ではできないと研究者らは述べています。科学者らは、このようなマイクロ流体研究によって得られた情報が、炭素貯留モデルの予測精度を向上することに役立つと考えています。

出典:Bowen Ling et al. Probing multiscale dissolution dynamics in natural rocks through microfluidics and compositional analysis. PNAS, 2022.