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カーボンフリーエネルギーへ迅速に移行すれば数兆ドルを節約できる可能性がある

グリーンエネルギーに関する技術のコストは急落しており、迅速に移行すれば、緩やかに移行するよりもはるかに費用を削減できる可能性があると研究者は述べている。

文:Prachi Patel
2022年9月15日

世界のエネルギーシステムを化石燃料からグリーンエネルギー技術に移行することで、少なくとも12兆米ドルを節約できることが、新しい研究により明らかになりました。

Joule誌に掲載されたこの研究は、2050年までに100%クリーンエネルギーに移行することで、化石燃料ベースのシステムよりも全体のコストが低くなることを示しています。また、クリーンエネルギーに移行することで、より多くのエネルギーを生産できるようになり、世界中でエネルギーがより利用しやすくなります。

気候変動に取り組むためには、エネルギー分野の脱炭素化が不可欠です。しかし、何千人もの命を救う可能性がある可能性のあるクリーンエネルギー技術への移行は、初期コストが法外に高いと考えられています。

しかし、オックスフォード大学の研究者らはこうしたコスト予測は間違っていると指摘します。過去のモデルは、再生可能エネルギーがどれだけ早く普及するかを過小評価し、コストを過大評価していたのです。このため、企業は再生可能エネルギー技術に投資せず、政府は化石燃料からの脱却を促進することができなかったと、主執筆者のRupert Way氏はプレスリリースで述べています。

そこでオックスフォード大学の研究チームは、過去のデータに基づいてより正確にコストを予測する確率論的モデル(probabilistic model)と呼ばれる別の方法に着目しました。研究チームは以前の研究で、石油、石炭、ガス、風力、太陽光、原子力を含む50種類の技術にこの方法を用いて検証しています。その結果、風力、太陽光、バッテリー、電気自動車、グリーン水素のコストは、主要なエネルギーモデルが予測したよりもはるかに大幅に低下していることがわかりました。太陽光発電の実際のコストは、最も野心的なモデルによる予測よりも2倍の速さで低下していました。一方、その間、化石燃料の価格は急騰しています。

今回の研究では、45年間の太陽光発電コスト、37年間の風力発電コスト、25年間の蓄電池コスト、そして水からグリーン水素を製造するための電解槽のデータを使用しました。

そして、これらの技術について確率的なコスト予測を行い、脱炭素化への移行シナリオとして「何もなし」「遅い」「速い」の3つを想定し、将来のエネルギーシステムにかかるコストを試算しました。

その予測に基づくと、風力発電、太陽光発電、グリーン水素のコストは低下し続けるとの結果が出ました。化石燃料ベースのシステムを継続する場合と比較して、グリーンエネルギーへの迅速な移行は、何兆円もの純費用を節約する可能性があることがわかりました。気候変動による損害の代償を考慮すれば、さらに大きな節約になる可能性があります。

20年以上にわたって、すべての主要なエネルギーモデルは、一貫してクリーンエネルギー技術のコストを過大評価してきたと研究者らは述べています。再生可能エネルギーはすでに化石燃料より安い場合もあり、その規模を急速に拡大すれば、コストはさらに低下します。

また、急速なグリーン転換は、気候変動の回避、大気汚染の削減、エネルギー価格の変動幅の縮小につながると期待されています。しかし、「これらの利点は移行に伴うコストに関する議論と対比されることが多い」と研究者らは論文で指摘しています。「我々の分析によれば、このようなトレードオフはありえない。より環境に優しく、より健康的で、より安全な世界のエネルギーシステムは、より安価になる可能性も高い」と述べています。

出典: Way, R. et al. Empirically grounded technology forecasts and the energy transition. Joule, 2022.