Search By Topic

SEARCH BY TOPIC



食事のテイクアウトにはプラスチックの問題があります。しかし、リユース容器は実際にどの程度役立つのでしょうか?

新しい包括的なライフサイクル分析によって、購入後に容器を返却する仕組みの利点と、容器の製造・使用にかかるコストを比較しました。わかったことは単純ではないということです。

文:Emma Bryce
2023年1月27日

リユースできるプラスチックのテイクアウト容器は、それを12回以上使用して、食器洗浄機に入れなければ、温室効果ガスの排出量、エネルギー、水の使用量が使い捨てのプラスチック容器よりも大幅に少ないことが、新しい研究によって明らかになりました。

化石燃料から新しいプラスチックを生産し1回で使い捨てるという我々が陥っている習慣よりも、リユース可能なプラスチックの方が環境に優しいのは当然のことのように思えるかもしれません。しかし、リユース可能な容器のライフサイクルを掘り下げてみると、実はそれほど単純な話ではないことが今回の研究で明らかになりました。

例えば、リユース可能な容器は、プラスチック使用量を削減するために、一部のレストランでテイクアウト容器の買取・返却する方法で使われていますが、通常、重くて厚いプラスチックで作られており、製造に多くの資源を必要とします。また、リユースするために定期的に洗浄する必要があり、レストランと消費者の自宅を往復するための輸送コストもかかります。このような要因が重なり、1つの容器の寿命が延びると、フットプリントが増加することになります。

リユース可能な容器の利点と、製造や使用にかかるコストとのバランスはとれているのでしょうか?この点が、Resources, Conservation & Recycling(資源、保全とリサイクル)の調査の焦点となりました。

この研究では、ミシガン州でレストランと消費者の間でリユース可能なテイクアウト容器の使用を試験的に行っているプログラムを対象に選びました。研究者らは、ポリプロピレンとシリコンでできた3種類のリユース可能な容器を、従来の使い捨て容器3種類と、さらに生分解できるサトウキビのパルプであるバガスでできた容器1種類と比較しました。

そして、それぞれの製造から使用後の廃棄に至るまで、CO2排出、エネルギー、水の使用を指標としたライフサイクルアセスメントを実施しました。

特にリユース容器については、製品のライフサイクル全体でどのように使用されるかを詳細に分析しました。例えば手で水洗いする場合と食器洗浄機で洗浄する場合の電気代や、洗剤の使用量を測定しました。また、消費者が容器を返すためにだけに移動する場合、つまり、新しい注文を受け取るためではなく、単に容器を返却するために移動した場合のコストも測定しました。

この包括的な分析により、リユース可能なプラスチック容器は、使い捨ての容器に比べて初期生産時のフットプリントは高いものの、これらのコストは時間とともに減少するという重要な側面が明らかになりました。

実際、複数回使用することで、使い捨てのプラスチックよりも、地球温暖化係数(GWP)やエネルギーコストは低くなります。これにかかる回数は、プラスチックの種類によって異なります。しかし、全体的に見ると、「リユース可能な代替品は、4回から13回使用した時点で使い捨て容器と均衡を保つことができることがわかった。GHG排出量では4~6回、一次エネルギー使用量では8~13回の使用で相殺された」と、ミシガン大学サステナブルシステムセンター(Center for Sustainable Systems)所長で論文の主執筆者であるGregory Keoleian氏は述べています。

この点を超えると、リユース可能な容器は、すべての指標において使い捨て容器よりも優れた実績を示し、環境に利点をもたらすことが分かりました。20回使用した場合、リユース可能な容器の一次エネルギー使用量は、使い捨ての容器に比べて54~67%減少し、地球温暖化係数は71~80%減少します。さらに、リユース容器の普及により、使い捨てを前提としたシステムに比べ、固形廃棄物を81%削減することができます。

一方、研究ではまた、このような効果は消費者行動の影響を大きく受けるため、注意しなければならないことがわかりました。

「私たちが発見した重要なことの一つは、もし消費者が新しい注文をとらずに、車でリユース容器を返すためだけに移動した場合、リユース容器システムの利点がすぐに逆転してしまうことだ」とKeoleian氏は言います。たった5%の消費者が不要な自動車移動をすれば、エネルギー節約効果はすぐに減少し、燃料費に埋もれてしまいます。この研究では、100%の消費者がリユース容器を食器洗浄機で洗浄した場合のモデルも作成しました。この場合、全員が容器を手ですすぐだけの場合と比較して、地球温暖化係数が120%増加します。

これらの発見は、プラスチック廃棄物が多い外食産業にとって、それを削減する大きな可能性を示す実用的な知見となります。また、世界的に9%しか行われていないリサイクルに頼るだけでなく、再利用率を高める必要があることも明らかです。このような背景から、この研究はリユース可能な容器が具体的な変化をもたらす可能性を示唆していますが、それは消費者の特定の行動を強化することによります。

例えば、容器返却を行うレストランは、返却前に容器を手ですすぐだけの利点を消費者に伝えると良いかもしれません。また、消費者がプラスチック容器を返却するためにかかる所要時間を短縮するために、返却場所を提供したり、車以外の方法で返却する消費者にインセンティブを与えたりすることも可能でしょう。「もちろん、自転車や徒歩、公共交通機関を利用して地元のレストランを利用するのが、テイクアウトや容器の返却にはベストな方法だ」とKeoleian氏は述べています。

また、丈夫でありながら軽量な容器を作り、リサイクルプラスチックで容器を製造すれば、化石燃料への依存を減らすことができます。

これらから学べることは何でしょうか?プラスチック汚染との戦いでは、産業界と消費者の両方の変化が重要になりますが、私たちはそれをいかにして実現できるか知る必要があるということです。

出典:Keoleian, et. al. “Parametric life cycle assessment modeling of reusable and single-use restaurant food container systems.” Resources, Conservation & Recycling. 2023