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化学者がバクテリアを使って空気中のCO2をバイオプラスチックに変換

新しいシンプルかつハイブリッドな方法で、バクテリアがCO2を捕捉し、数日にわたって生分解性プラスチックを生産することが可能になり、生産量は従来の100倍に増加しました。

文: Prachi Patel
2023年3月30日

プラスチックと気候変動は、切っても切れない関係にあります。プラスチックは石油を原料としており、その生産のほぼすべての段階で温室効果ガスが排出されます。国際環境法センターによると、プラスチックの生産と使用が通常通り増加した場合、2030年までにその排出量は年間1.34ギガトンに達します。これは約300基の大型石炭火力発電所の排出量に相当します。

炭素循環を閉じるために、韓国の化学技術者らは二酸化炭素を効率的に生分解性プラスチックに変えるバクテリアを活用しました。これは「CO2排出量を減らし、環境に優しいバイオプラスチックを生産するための例外的な戦略」となり得ると、彼らはProceedings of the National Academy of Sciencesに書いています。

多くの革新的な研究者が、排出された二酸化炭素を回収して有用な化学物質、燃料、プラスチックを生産することを検討してきました。最も大規模な研究活動は、熱や電気とともに触媒を使用して、産業資源から回収した二酸化炭素をプラスチックに変えることに焦点を当てています。

研究者やいくつかのスタートアップ企業によって追求されている新しい方法は、空気中の二酸化炭素を回収してポリエステルに変えることができるバクテリアを活用するものです。10年以上前、科学者たちは、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)というバクテリア(水素細菌)が炭素源を発酵させ、ポリヒドロキシブチレート(PHB)とい生分解性プラスチックを生産できることを発見しました。PHBは生分解性プラスチックで、疑問視されてはいるものの、食品包装、飲料ボトル、使い捨てカトラリーの製造に使われる石油由来のプラスチックに代わる環境に優しい代替品として考えられています。

しかし、微生物による発酵プロセスは少量ずつしかできません。というのも、発酵を開始するには電気が必要で、最終的には有毒な副産物が蓄積して微生物が死んでしまうからです。

韓国科学技術院(Korea Advanced Institute of Science and Technology)の化学・生体分子工学のチームは、スケーラブルな解決策を発見しました。電気、触媒、バクテリアを組み合わせたバイオハイブリッドな方法を開発したのです。彼らは、膜で仕切られた2つのチャンバーからなるリアクターを作りました。

一つのチャンバーでは、錫の触媒が化学反応を促し、炭酸ガスをギ酸塩という化学物質に変換します。ギ酸塩は膜を通って反対側に流れ、C. necatorが発酵してPHBプラスチックの粒を作ります。膜はバクテリアを有毒な副産物から守ります。

論文では、新鮮なバクテリアを供給する一方、発酵産物のポリエステルを菌体内に蓄積したバクテリアの除去を継続することで、18日間連続的にリアクターを作動させることができたと報告しています。このシステムでは、1時間あたり11.5mgのポリエステルが生成され、同様のシステムで報告されている数値の約100倍だったと報告しています。

この方法ではまだ電気は必要だが、再生可能な電力で動作することも可能なため、スケールアップが容易で費用対効果も高いはずだと研究チームは述べています。

出典: Jinkyu Lim et al, Biohybrid CO 2 electrolysis for the direct synthesis of polyesters from CO2, Proceedings of the National Academy of Sciences, 2023.