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道路標識の技術が都市の気温を最大20℃下げる可能性

プリズムと反射材をベースにした再帰反射(リトロリフレクター)に関する技術を使って、太陽光を空へ導き、都市を涼しくすることができるとプリンストン大学のエンジニアらが報告。

文:Anthropocene Team
2024年4月18日

気候変動により極端な熱波がより頻繁に、より長く続くようになり、世界中で熱中症による死亡が増加しています。地球温暖化がこのまま進めば、暑さによる死者は370%増加すると予測されています。

密集した都市部ではヒートアイランド現象により、この熱の影響がより顕著になります。しかし、プリンストン大学のエンジニアによれば、反射型の道路標識や自転車のリフレクターに見られる技術を使って太陽光を空に反射させれば、都市を涼しくすることができるといいます。

リトロリフレクターと呼ばれるこの技術は、プリズムと反射材を組み合わせて、暗い場所でも遠くから見えるマーカー(目印)を作る際に使われるものです。

この再帰反射材を建物の壁や道路に装備することで、都市の気温を最大20℃下げることができると、研究者たちは『Nature Cities』誌に報告しています。この技術により、気温や人の皮膚温度も顕著に改善されるはずです。

 「米国では、他のどの気象関連事象よりも猛暑が原因で死亡する人が多い。人々が涼しく過ごせるような技術の開発と普及が急務だ」と土木環境工学が専門のElie Bou-Zeid教授は指摘します。

都市部は周辺の農村部よりも気温が数度高いことがよくあります。それは、アスファルトやコンクリートなどの建材が植物よりも熱を吸収するからです。計画的に都市に緑地を増やしたり屋上を緑化したりすることは、都市を涼しくするのに役立ちます。もうひとつの解決策は、舗装や屋根反射性のある白い塗料を塗ることです。しかし、太陽放射はあらゆる方向に散乱する可能性があるため、密集した都市部の壁や狭い道路を塗ってもうまくいかない可能性があり、放射が都市の峡谷で跳ね返れば、効果を悪化させる可能性さえあります。

一方、再帰反射材は、散乱を最小限に抑えて光を反射させ、光が来た方向と同じ方向に送り返すため、都市部から出ることになります。プリンストン大学の研究チームは、この材料はコーティングやシートとして作ることができ、低コストで非常に効果的な都市の暑さをしのぐ方法となるだろうと言っています。

プリンストン大学の研究者たちは、さまざまな気候条件、緯度、季節、都市の形状に対応する最適な再帰反射材を設計しました。政策立案者や都市計画者は、このガイドラインを使って、都市の緯度、アスペクト比、道路の向きに基づいて最適な再帰反射材を選ぶことができるようになっています。

「我々の分析によると、開放的な低層エリアには再帰反射舗装が推奨され、コンパクトな高層エリアには具体的な再帰反射壁の設計戦略が推奨される」と彼らは書いています。

出典:Xinjie Huang et al. Optimizing retro-reflective surfaces to untrap radiation and cool cities, Nature Cities, 2024.
画像:Bernard Spragg via Flickr