洗濯習慣に関する心理学がサステナビリティの新しいキャンペーンの展開を示す
これまでのところ、より環境に優しい方法で人々に洗濯をしてもらおうとする取り組みはほとんど効果を上げていません。新しい研究は、私たちの頭の中に問題があることを示唆しています。
文:Sarah DeWeerdt
2024年6月18日
衣類の洗濯による炭素排出量は過去最高を記録しています。また、世界中で発生するマイクロプラスチックの16~35%が洗濯によって排出されています。ここ数十年の間に、洗濯機のエネルギー効率は向上しました。しかし、人々の洗濯の回数は以前より増えているため、その効果は相殺されてしまっています。
これまでのところ、より環境に優しい方法で洗濯をするよう促すキャンペーンはほとんど効果を上げていません。新しい研究によると、その理由は私たちの心理の原始的な側面にあるようです。
嫌悪感に対する感受性が高い人ほど、洗濯を頻繁にする傾向があることが明らかになりました。このパターンは、環境に優しいという価値観に関係なく存在し続けます。
この研究結果は、「環境を意識した行動に関して相反する目標を認識することの重要性」を示唆していると、研究チームのメンバーであるスウェーデン、イェーテボリにあるチャルマース工科大学の大学院生、Erik Klint氏は言います。
嫌悪は人を感染や危険物質から守る原始的な感情であり、科学者が行動免疫システムと呼ぶものの一部です。嫌悪感は羞恥心と関連しています。例えば、清潔にしていない人間だと思われるなど、他人の嫌悪感の対象になったとき、私たちは羞恥心を感じます。「他人に嫌悪感を抱かせることへの恐怖は、強い社会的原動力だ」とKlint氏は指摘します。
この新しい研究は、洗濯習慣を心理学的に調査した数少ない研究のひとつです。Klint氏と彼の共同研究者たちは、スウェーデンの人々を対象に2回のオンライン調査を実施し、それぞれ約1,000名が参加しました。また、1回目と2回目の調査の間にアンケートを修正するために、合計約40人を対象にオンラインでフォーカス・グループも実施しました。
「最も驚いたのは、洗濯に関する議論がいかに人々にとって魅力的であるかということだ」とKlint氏は言います。調査参加者は「洗濯行動についての議論を検証し、それに貢献したいという隠れた欲求」を示していたと言います。
嫌悪感や羞恥心といった心理的構成要素が、洗濯機を回す頻度に直接影響することはないと、研究者らは学術誌『PLoS ONE』で報告しています。その代わり、これらの要因が、洗濯頻度を決定することになる洗濯物の山がどれくらい早く溜まるかに影響すると指摘しています。「つまり、環境上の理由から行動変容を目指すのであれば、洗濯を直接ターゲットにするのではなく、洗濯を生み出す行動や習慣に焦点を当てるべきだということを意味する」とKlint氏は言います。
言い換えれば、洗濯による二酸化炭素排出量を減らす必要性を説くよりも、サステナビリティに関するキャンペーンは、例えば、洗濯物のかごに衣類を入れる前に、それを何度も着ることを習慣化することに焦点を当てるべきだということです。
「インタビューからも、洗濯が必要かどうかを意識的に判断し、”転ばぬ先の杖 “の原則に基づいて決める人はほとんどいないこともわかった」とKlint氏は言います。さらに、Klint氏は「洗濯機を使う代わりに、ただ衣類を干したり、手洗いで汚れを落としたりする必要があるかもしれない。その方が環境にとっても良い」と言います。
洗濯機で洗うと衣類の消耗が早くなるため、これは節約にもつながると研究者たちは指摘します。
ある行動が環境に与える影響だけに注目するのではなく、人々の根底にある動機を考慮したメッセージは、他のサステナビリティに関するキャンペーンにも役立つ可能性があります。「とはいえ、変化への意欲を高めるために、この知識をどの程度(そしてどのように)実践的に利用できるかは、まだ調査中である」とKlint氏は言っています。
Klint氏自身は、洗濯に対して、より前向きでリラックスした姿勢をとるようになったと言います。彼はまた「この調査から感じたことは、体臭が強かったり、顔の近くに大きなシミがあったりする場合を除けば、ほとんどの人は他人の清潔さには無頓着だが、自分の清潔さには高い意識を持っているということだ。すべては私たちの頭の中にある」と言っています。
出典:Klint E. et al. “Pro-environmental behavior is undermined by disgust sensitivity: The case of excessive laundering.” PLoS ONE 2024.
画像:Michael Dales via Flickr.
DATE
July 19, 2024AUTHOR
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