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廃水を浄化し、同時に発電もできるバクテリアを開発

研究者たちは、過去の関連する研究を基に、より速く汚水を処理し、より強力な電流を発生させる新しい細菌株を作り出しました。

文:Sarah DeWeerdt
2024年7月23日

一般的なバクテリアの遺伝子組換え型およびナノエンジニアリング型は、下水に含まれるような炭素含有化合物を貪食し、その過程で驚異的な量の電力を発生させることができると新しい研究が発表しています。

このアプローチは、再生可能な発電と持続可能な廃水浄化という目標を両立させるために微生物の力を利用しようとする最新の一連の取り組みです。

「微生物燃料電池(MFC)は、微生物の力を借りて汚染物質を分解し、同時に発電することができる新しい技術だが、このプロセスを触媒する既存の方法は、高価であったり、反応が鈍かったりする傾向がある」と、中国新郷市にある河南師範大学の研究者たちは学術誌『Nature Sustainability』に書いています。

大腸菌は、世界で最もよく研究されている細菌種のひとつで、通常は人間やその他の動物の腸内に生息しています。この新しい研究で研究者たちは、まず遺伝子工学を用いて大腸菌のシトクロムcの生産を高めました。

シトクロムcは細胞膜に存在するタンパク質で、細胞のエネルギーバランスに関与し、酸化反応と還元反応を触媒します。そのため、働きが鈍い部分はこれを活用することで解決したのです。

次に、研究者たちはナノ工学の技術を使い、微細なフリッターをさらに微細なパン粉で転がすように、バクテリアに導電性ポリマーであるポリピロールの粒子をコーティングしました。

最後に、彼らは市販の白金カーボンを負極に、改良された大腸菌を正極に使って、電池のような燃料電池を作りました。(ポリピロールの 「パン粉 」はバクテリアが電極に付着するのを助け、燃料電池内での電気の移動を促進します。)その出力は、「これまでに報告されている高性能バイオ燃料電池に匹敵する」と研究者たちは報告しています。

遺伝子組み換えおよびナノ加工された大腸菌は、これまで微生物燃料電池の実験に使われてきた他の種類のバクテリアよりも速く、下水中の炭素含有有機化合物を貪食します。また、ナノコーティングを施していない標準的な大腸菌や人工の大腸菌よりも強力な電流を発生させます。

ナノコーティングは細菌の生存能力や繁殖に影響を与えないため、大腸菌は餌がある限り発電を続けます。今回の研究では、「微生物触媒は、電流がほとんど減衰することなく、80(時間)以上持つという優れた寿命がある」と研究者たちは報告しています。

バクテリアは実験開始から100時間後までに培地中の栄養分をすべて消費しましたが、餌を補給するとすぐに発電性能は急速に元の値まで回復しました。もちろん現実の世界では、栄養分を含んだ廃水は、多かれ少なかれ無限に供給可能なものです。

「この研究は、持続可能な微生物触媒の設計において新たな方向性を示すだけでなく、廃水処理とエネルギー生産のための実現可能な技術を示唆している」と研究者たちは指摘しています。

出典:Niu Y. et al. “Sustainable power generation from sewage with engineered microorganisms as electrocatalysts.” Nature Sustainability 2024
画像:Anthropocene Magazine