2050年までにプラスチック汚染をなくすために必要な4つの政策
研究者たちは、プラスチックの未来を予測する新しい機械学習アプローチを用いて、たった4つの政策介入によって、2050年までに世界のプラスチック廃棄物の91%をなくすことができることを実証しました。
文:Anthropocene Team
2024年12月5日
先週開催された国連サミットでは、プラスチック汚染に対処するための画期的な世界条約が締結されると期待されていました。政治の世界ではよくあることですが、交渉が合意に至らないまま終了し、その期待は打ち砕かれました。交渉がまとまらなかった主な理由は、サウジアラビアをはじめとする石油産出国がプラスチック生産の制限を受け入れることを拒否したことです。
しかし、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の研究者によれば、これはプラスチック汚染を削減するために必要な4つの重要政策のうちの一つになるとされています。彼らの研究は、これらの政策によって、2050年までに世界のプラスチック廃棄物の91%を削減し、プラスチックに関連する炭素排出量のほぼ3分の1を削減することができることを示しています。
このような政策がない場合、管理されていないプラスチック廃棄物は、2050年には2倍の1億2,100万トンにまで増加すると研究者は指摘しています。
現在、世界では年間3億5,000万トン以上のプラスチック廃棄物が発生しています。その多くが管理されずに、土壌や水域、大気中に排出されています。UCSBのプレスリリースは、2021年には6,800万トンのプラスチック廃棄物が適切に処理されていなかったと指摘しています。そのうちの約1,000万トンが海洋に流れ込み、そのことで海洋生物に様々な害を及ぼす可能性を生み出しています。
UCSBの研究者たちが『Science』誌に発表した論文で概説している4つの政策とは、プラスチック生産量を2020年の水準に制限すること、新製品にリサイクルプラスチックを40%使用することを義務づけること、プラスチック包装に少額の手数料を課すこと、特に世界の低所得地域における廃棄物管理に多額の投資をすることです。
このような政策は多大な要求です。しかしプラスチック汚染問題の規模も大きく、この研究は、十分な政治的野心と市場原理が働けば、問題は解決可能であるという希望を与えるものでもあります。
国際的な研究チームは、世界のプラスチック生産、使用、その行末に関する傾向を予測するために、新しい機械学習モデルを開発しました。また、このモデルを用いて、8つの政策介入が個別に、あるいは組み合わせた場合にどのような影響を及ぼすかをシミュレーションしました。
「この研究で最も興味深い発見のひとつは、条約によってプラスチック汚染をほぼ終息させることが実際に可能だということだ」と、UCSBのDouglas McCauley教授(海洋生態学)は言います。
実際、世界的な法的拘束力のある条約によって推進される規制や政策が、プラスチック汚染を終わらせる唯一の希望となります。今のところ、国連のプラスチック条約協議は、後日に延期され、まだ発表されていません。
出典:A. Samuel Pottinger et al. Pathways to reduce global plastic waste mismanagement and greenhouse gas emissions by 2050. Science, 2024.
画像:©Anthropocene Magazine
DATE
January 27, 2025AUTHOR
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