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ヒゲワシの巣は人と環境の変化を記録する600年のアーカイブとなる

スペインの研究者たちは、12の古代の巣から数千点におよぶ遺物を分類し、死肉をあさるヒゲワシの行動が新たなデータを考古学、毒物学、生態系研究に提供できることを示しました。

文:Warren Cornwall
2025年10月8日

絶滅危惧種のヒゲワシは数十年前にスペイン南部の崖から姿を消しました。しかし、600年以上前の過去を垣間見ることができる奇妙な遺産が残っています。

ヒゲワシが築いた巨大な巣は、鳥の糞で染まった一種のアーカイブでもあり、13世紀にさかのぼる人間の雑多な遺物も詰まっています。研究者たちは、12の放棄された巣を調査する中で、200点を超える人間が作ったさまざまな品々を発見しました。

乾燥した気候の洞窟内に長期間にわたり頑丈に築かれたこれらの巣は、外的要因から守られた「自然の博物館」として機能してきたと、スペインの研究チームは先月、学術誌『Ecology』で報告しています。「これは、古代のヒゲワシの巣に蓄積された人為的な物質を分析する今後の研究の可能性を開くものだ」と述べています。

この、あまり注目されてこなかった掃除屋(スカベンジャー)の一群に関する利点のリストに、また一つ新たな項目が加わりました。たとえば最近の研究では、インドのハゲワシが数十万人もの命を奪う病気の拡大を抑制していることが明らかになっています。

ヒゲワシは、巣に使う材料探しとゴミを世界中に散らかす人間の習性のおかげで、生息地が散らかった歴史記録の役割も果たす動物の一例にすぎません。アメリカ南西部の砂漠地帯では、モリネズミの巣が千年以上にわたる人間の歴史を明らかにし、3万年以上前にさかのぼる昆虫のDNAも保存していました。アメリカ地質調査所(USGS)は、パックラットの巣から採取された古代の貴重な資料の詳細な記録を管理するデータベースさえ運営しています。

スペインでは、研究者たちが2008年から2014年の間に巣を調査し、枝やその他の自然の破片と混ざった2,483点の遺物を分類しました。その内訳は、骨の破片が2,117点、卵殻が43片、ひづめが86個、革の塊が72個、衣類の切れ端が126点となっていました。

これらのうちいくつかは、主に死肉の骨から成るヒゲワシの食事の一部だった可能性があります。しかし、それ以外のものは説明がつきません。

たとえば、ヒゲワシが木製の槍の先端や金属製のクロスボウの矢を巣に持ち込んだのはなぜでしょうか?また、放射性炭素年代測定によると約670年前のものである、草や小枝で編まれた靴で何をしていたのでしょうか?

そして、やや謎めいているものの人間が作ったと見られる品々もありました。赤い線が描かれた650年前の羊革の一片、150年前に編まれた籠の破片、そして編んだ草で作られたスリングショット(Y字型の枠で弾を飛ばす道具)の一部です。

これらのものが何を意味するのかについて、研究者たちは明確な結論を出してはいませんが、このような発見は、周囲の生態系の状態だけでなく、それとともに人間社会がどのように進化してきたのかについての洞察を示す可能性がある、と科学者たちは記しています。

自然の残骸も過去についての貴重な手がかりとなる可能性があります。例えば、卵殻を分析することで、そこに生息していたヒゲワシが過去に有害な化学物質にさらされていた証拠を探ることができます。

一方で、これらのヒゲワシはヨーロッパでは歴史的な珍品となる危険にさらされています。何世紀にもわたり、この巨大な鳥たちは害鳥として狩猟や毒殺の対象とされてきました。現在、ヨーロッパ大陸に残っている繁殖ペアは500組未満で、そのほぼ半数がピレネー山脈に集中しています。

最近の保護活動のおかげで、復活の兆しも見えています。また、アフリカ、中東、中央アジアの一部にも別の個体群が存在します。しかし、国際自然保護連合(IUCN)によると、世界全体のヒゲワシの個体数は1,675〜6,700羽と推定されており、その数は減少傾向にあります。

もしこれらの鳥たちが生き残れば、将来の科学者たちは彼らの巣からどんな現代のゴミを見つけることになるでしょうか。例えば、針金の切れ端?壊れた携帯電話?ポリエステル製の衣類の切れ端などでしょうか?

出典:Margalida, et. al. “The Bearded Vulture as an accumulator of historical remains: Insights for future ecological and biocultural studies.” Ecology. Sept. 11, 2025.
画像:Animalia and Sergio Couto/Ecology 2025