気候変動の速さに進化は追いつけるのか。この花が希望を示している
深刻な干ばつに適応したスカーレット・モンキーフラワーの進化は、一部の植物が極端な気候条件にも迅速に対応できる可能性を示しています。
文:Warren Cornwall
2026年3月18日
温暖化が進む世界において、生物が変化に適応できるよう、人々はさまざまな取り組みを行ってきました。例えば、異なる地域のサンゴを掛け合わせて耐熱性の高い個体を育てたり、将来も比較的涼しいと予測される生息地を保護したり、渡り鳥を移動させて季節の変化に追いつけるようにしたりしてきました。
しかし、生物は人間の助けを待っているだけではありません。最新の例として、地面を這うように広がり鮮やかな赤い花を咲かせる多年草、スカーレット・モンキーフラワーが、深刻な干ばつに直面しながらも急速に進化できる遺伝的能力を備えていることが、学術誌『Science』に掲載された研究で明らかになりました。
この発見は、少なくとも一部の種が気候変動のスピードに追いつける可能性があることを示唆しています。また、温暖化した世界に、より適した同一種内の植物を選び出す指針となり得る、遺伝的な手がかりも示しています。
「これまでの懸念は、気候変動の進行があまりにも速く、変化が大きすぎて進化が追いつけないのではないかという点だった。今回の研究は、モンキーフラワー、そしておそらく類似の野生植物が、実際に変化に追いつき、自らを“救う”ことができることを示している」と、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)の生態学者で本研究の責任著者であるAmy Angert氏は言います。
この新たな知見は、ある偶然から生まれました。Angert氏らは2000年代初頭、オレゴン州とカリフォルニア州の各地からスカーレット・モンキーフラワーの種子を採取し始めました。当時すでにこの地域は「メガ干ばつ」と呼ばれる深刻な乾燥状態にありましたが、その最も厳しい時期が2012年から2015年にかけて訪れ、カリフォルニア州では過去1万年以上で最も乾燥した状況となることは予想していませんでした。
このことは、研究者たちに、花の個体群レベルとDNAレベルの両方で、進化がリアルタイムで進む様子を観察する機会を与えることになりました。科学者たちは、2012年以前に採取された55のモンキーフラワーの個体群の種子を使い、より乾燥・高温な環境との関連が見られるDNAパターンを解析しました。その結果、こうした過酷な環境に生育する地域と対応して、一部の個体に遺伝的変異が見られるDNA領域を215か所発見しました。これらの遺伝的違いは、光合成の速度や、葉にある気孔(空気と植物の間でガスや水分の移動を調節する小さな孔)の機能と関連していました。
さらに研究チームは、2010年から2016年にかけて、異なる地域の11の個体群から採取された種子を調べました。この期間は最も深刻な干ばつと重なっています。その結果、干ばつに関連するDNAパターンが、3つの個体群でより一般的になっていることが分かりました。
干ばつが緩和された後、これら3つの個体群は最も早く回復しており、こうしたDNA変異の増加が適応上の利点となった可能性があります。
「本質的に、最も早く回復した個体群は、最も速く進化した個体群でもあった」と、筆頭著者であり、以前、UBCでAngert氏のもとでポスドク研究員を務めていたコーネル大学のDaniel Anstett教授は述べています。
この研究は、将来より頻繁に起こると予想される極端な環境条件に対し、植物がどれだけ適応できるかを示す遺伝的手がかりを、実際にその事象が起こる前から見つけられる可能性を示しています。「これは未来を予測するための水晶玉のようなものだ。進化に関わる遺伝子を特定できれば、長期的な干ばつを乗り越えるためにどのような特性が重要か理解できる」とAnstett氏は言います。
これはまた、変化する気候に適した個体を選ぶ際の保全管理にも役立つ可能性があります。
ただし、話はそれほど単純ではありません。例えば、モンキーフラワーの中には、「干ばつ耐性」に関わるDNAの頻度が逆に減少した個体群もあり、特定の条件ではこれらの遺伝子が不利に働く可能性も示唆されています。
さらに、すべての植物がモンキーフラワーのように迅速に進化できるわけではありません。例えば、何世紀も生きる成長の遅い樹木などがそうです。「すべての種が自力で立ち直れるわけではない。問題は、どの種がモンキーフラワーのように適応できるのか、それともダグラスファー(米松)やレッドシダー(米杉)のようになるのか、ということだ」とAngert氏は述べています。
出典:Anstett, et. al. “Rapid evolution predicts demographic recovery after extreme drought.” Science. March 12, 2026.
画像:Image based on Scarlet Monkeyflower photo by Easyscape
DATE
April 23, 2026AUTHOR
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