フィンテック:サメが海洋予測を進化させるかもしれない
アメリカ東海岸沖で19匹のサメに取り付けられたセンサーにより、主要な気候モデルの誤差が最大43%改善されました。漁業管理への活用も期待されています。
文:Warren Cornwall
2026年5月6日
広大な海洋は、人類の理解の試みをはるかに超える存在です。センサーを搭載したブイ、高高度を飛行する衛星、そして高度なコンピューターモデルをもってしても、地球表面の3分の2以上を覆う海の深部を完全に把握するには限界があります。
しかし、海を熟知している生物なら、人類により正確な海洋の姿をも示してくれるかもしれません。学術誌『npj Climate and Atmospheric Science』に掲載された新たな研究によれば、サメは移動型かつ広範囲に活動するセンサーシステムとして機能し、海洋状態への理解を深めるデータを収集できる可能性があるといいます。またその成果は、漁業管理やその他の重要な活動に役立つ可能性があるとのことです。
「サメは、私たち人間が観測するのが難しい海域をすでに移動している。今回の研究は、サメが収集するデータが重要な情報の空白を埋められることを示している」と、論文筆頭著者であり、米マサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所(WHOI)の博士研究員Laura McDonnell氏は述べています。
科学者たちは以前からサメにセンサーを取り付けてきましたが、その主な目的はサメ自身の行動を理解することでした。筆者も2022年、アフリカ沖の大西洋で5日間にわたり研究チームに同行し、サメを捕獲して背びれに電球ほどの大きさのセンサーを装着する様子を取材しました。研究者たちは、低酸素水域を泳ぐ際にサメの行動がどのように変化するのかを調べようとしていたのです。
今回の論文の共著者であるNeil Hammerschlag氏も、2018年当時、マイアミ大学(UM)の海洋生態学者として同様の目的でセンサーを利用していました。その際、UMの大気科学者Ben Kirtman氏と、センサーから得られるデータを、魚ではなく海そのものを研究するために活用できないかという議論をしました。
「サメのような海洋捕食者は、前線や渦流といった海流の変化が激しい場所を自然と探し求める。このような海域は、モデルに十分な観測データが存在しないことが多い」とKirtman氏は説明します。
当時UMの博士課程学生だったMcDonnel氏は、このアイデアが実際に機能するかどうかの検証に取り組みました。2021年10月、彼女と研究チームは米国北東部沖の海域で、18匹のヨシキリザメと1匹のアオザメの背びれにセンサーを装着し、高速移動するドローンのように海へ放ちました。
その後数か月間、サメの背びれに取り付けられた機器は、水温と水深をリアルタイムで測定し続けました。これら2つのデータは、特定海域の海洋状態を理解する上で極めて重要になります。サメが海面に浮上すると、衛星経由でタグから情報が研究者に送信されるようになっていました。最終的に、研究チームは8,200件以上の海洋環境データをサメから取得しました。データは主にバージニア州以北のアメリカ東海岸沿岸に集中していましたが、サメたちはフロリダ沖から大西洋中央部まで広範囲を移動していました。また、サメの潜水時には約2,000メートルの深海環境についても科学者は情報を得ることができました。
研究者たちは、この膨大なデータを活用し、海洋ブイなどから得られる情報を基に現在の海洋状態を予測する既存のコンピューターモデルを改良しました。その結果、サメがデータを収集していた期間の海洋状態をモデルがどの程度正確に再現できるかを科学者たちが検証したところ、海域によっては、サメのデータを活用した手法のほうが、従来のモデルよりも現実にかなり近い結果を示しました。(コンピューターモデルが過去の状態をどれだけ正確に再現できるかを確認することは、海洋モデルや大気モデルにおける標準的な検証方法です。)
特に改善が顕著だったのは浅い大陸棚で、11月にはモデル誤差が43%、12月には33%削減されました。海面水温については、従来より約1.5℃精度が向上したことになります。わずかな水温変化が生態系に大きな影響を及ぼす海洋環境において、これは重要な改善です。
「漁業や沿岸コミュニティにとって、海洋予測のわずかな精度向上でも大きな違いを生む。不確実性が減ることで、漁場選定や資源管理、変化する環境への対応計画が立てやすくなる」と、研究に参加したWHOIの海洋学者Camrin Braun氏は言います。
もっとも、McDonnell氏は、サメが既存の観測システムに取って代わるわけではないと強調しています。今回の研究は短期的な実験に過ぎず、サメを本格的に海洋予測の最前線に投入する包括的計画も現時点では存在していません。しかし今回の成果は、これまでサメの生態把握のためだけに使われてきたタグが、海洋変動というより大きな謎を解明するためにも活用できることを示しています。
出典:McDonnell, et. al. “Improved seasonal climate forecasting using shark-borne sensor data in a dynamic ocean.” npj Climate and Atmospheric Science. April 28, 2026.
画像:Blue shark (Prionace glauca) © Diego Delso via Flickr
DATE
May 24, 2026AUTHOR
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