密猟で傷ついたゴリラが再び人を信頼するようにーそれが彼らを救うかもしれない
カメルーンで12年間にわたる研究の結果、ゴリラを研究者の存在に慣れさせることが密猟の減少につながり、絶滅の危惧に瀕している大型類人猿の保全モデルとなる可能性が示されました。
文:Warren Cornwall
2026年6月17日
人間が希少で魅力的な野生動物の近くにいることは、諸刃の剣です。
一方で、人間は生息地の破壊や密猟、野生動物の違法取引など、野生動物にとって最大の脅威となっています。他方で、観光客やレンジャー、研究者などが日常的にその場にいることは、別の人間による被害から野生動物を守る最も有効な手段にもなり得ます。
カメルーンのディピカー島(Dipikar Island)に生息するゴリラは、この両面を象徴しています。長年にわたる密猟によって個体数は減少し、人間が近づくと警戒し、容易には受け入れなくなっていました。しかし、新たな研究によって、人間による被害を受けてきたゴリラであっても、危害を加えない人間への警戒心を和らげ、その人々がもたらす保護を受け入れられるようになることが明らかになりました。
今年『African Journal of Ecology』に掲載されたこの研究について、筆頭著者であるモントリオールのコンコルディア大学博士課程のFrance Anougue氏は「ゴリラには、密猟者のような脅威となる人間と、研究者や観光客のような脅威にならない人間を区別する能力がある。こうした人々が日常的に存在しなければ、ゴリラの個体群はすぐに危険にさらされてしまう」と述べています。
もちろん、このような信頼は短期間で築かれたわけではありません。アフリカの他地域では、ゴリラが人間に慣れるまでに最短28か月程度だったという研究があります。しかし、それらの研究は、密猟の被害が比較的少ない保護区で行われたものでした。そのため、カメルーンで研究者たちが12頭のゴリラの群れを対象に調査を始めた当初、そのゴリラたちが人間をこれほど受け入れるようになるかどうかは分かっていませんでした。
変化には長い時間がかかりました。2011年から2014年にかけて、ゴリラを活用した観光の推進にも取り組む自然保護団体WWF(世界自然保護基金)の支援を受けた研究チームは、まず距離を保ちながらゴリラの行動や移動パターンを観察しました。対象となった群れは、成熟したオス1頭(シルバーバックと呼ばれるもの)を中心に、その年によって3~4頭の成獣のメス、1~2頭の若齢個体、2~3頭の幼獣、さらに1~3頭の乳児からなる家族でした。
2015年からは、研究者と地元の追跡調査員が少しずつゴリラとの距離を縮め始め、その反応を観察する取り組みを始めました。彼らは、舌を鳴らしたり指を鳴らしたりして自分たちの存在に気づかせながら、ゴリラの群れに近づきました。ゴリラが人間に気づくと、研究者たちはゴリラが食事をするしぐさをまねるなど、中立的で脅威を与えない行動をとったと、論文は報告しています。
研究開始から数年間は、ゴリラは約30%の確率で威嚇行動を示し、さらに30%以上の確率で恐怖反応を見せました。人間に対して好奇心や無関心を示すことはほとんどありませんでした。
しかし、研究が続くにつれて状況は徐々に変化しました。研究の取り組み開始から7年後の2022年には、人間が近くにいても恐怖や攻撃的な反応を示すことはほとんどなくなりました。代わりに、30%以上のケースで人間に対する好奇心を示し、ほぼ同じ割合で無関心な様子を見せるようになりました。
Anougue氏は「若いゴリラにも同じような寛容さが見られました。これは、この行動が群れの他の個体から学習されたことを示唆している。彼らの信頼を得ることは決して簡単ではなかった」と述べています。
こうした害のない研究者との接触が増え、同時に密猟の取り締まりが強化された結果、密猟活動そのものも減少しました。銃声や薬莢、密猟者のキャンプ跡といった密猟の痕跡は、2015年から2022年の間に約半分まで減少しました。ただし、この減少が研究者の存在そのものによる効果なのか、それとも密猟対策の強化や保全活動に対する地域住民の理解が進んだことによるものなのかは、現時点では明確には分かっていません。
Anougue氏は、この研究はゴリラが過去のトラウマを乗り越え、人間への信頼を再び築くことができる高い行動的レジリエンス(回復力)を持っていることを示していると考えています。そして、それはゴリラの生存可能性を高めるだけでなく、地域社会にも利益をもたらす可能性があります。「この研究は、ゴリラを保護することが生物多様性の保全につながることを示している。そして、エコツーリズムの発展による経済効果によって、地域コミュニティも恩恵を受けることができる」とAnougue氏は述べています。
出典:Anougue, et. al. “Habituation as an Effective Conservation Tool for Western Gorillas in Areas With a History of Poaching.” African Journal of Ecology. April 28, 2026.
画像:USAID Biodiversity & Forestry via Wikimedia
DATE
July 20, 2026AUTHOR
Future Earth Staff MemberSHARE WITH YOUR NETWORK
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