マングローブが復活しつつある ― 気候変動対策における数少ない成功事例
何十年もの間、私たちは気候変動によって失われつつあるものを記録してきました。しかし、この包括的な新たな研究は、それよりも見つけるのが難しいある事実を明らかにしています。それは、地球上で最も重要な沿岸生態系の一つが、実は回復の兆しを見せているという証拠です。
文:Warren Cornwall
2026年6月10日
世界各国の沿岸部では、明るいニュースが芽生えています。
炭素を大量に蓄え、嵐による浸水から陸地を守る能力で注目されているマングローブ林が、再び拡大し始めているのです。
陸と海の境界に広がる湿潤な環境で生育するマングローブ林は、20世紀の大半において深刻な減少を経験しました。その主な原因は、養殖池や水田などの農地開発のために伐採されたことでした。しかし、科学誌『Science』に最近掲載された研究によると、この10年間でマングローブは再び増加に転じ、1980年以降に失われた面積のほぼすべてを回復したことが明らかになりました。
研究の筆頭著者であり、テュレーン大学(Tulane University)の博士研究員であるZhen Zhang氏は、「数十年にわたる減少の後、私たちはついにマングローブに関する世界的な転換点を目の当たりにしている」と述べています。
Zhang氏らの研究チームは、世界中で過去40年間に取得された衛星画像をコンピュータ解析しました。マングローブ林は光を反射する独特の特徴を持つため、研究チームはコンピュータにこの植生を識別させ、その変化を時系列で追跡できるようにしました。
分析の結果、世界の多くの地域で長年続いていた減少傾向が近年反転していることが判明しました。1980年代から2010年までの間に、世界のマングローブ林面積は約15万5,000平方キロメートルから15万2,000平方キロメートルへと減少しました。これは米国ロードアイランド州の半分ほどの面積に相当します。一見すると大きな減少には思えないかもしれません。しかしマングローブは比較的狭い沿岸帯に分布するため、その防災機能は面積以上に大きな価値を持っています。
その後2010年以降、マングローブ林は約15万4,000平方キロメートルまで回復し、1980年代以降の損失をほぼ取り戻しました。
共同著者であり、テュレーン大学でThe Mangrove Labを率いるDaniel Friess氏は、「依然として失われているマングローブもあるが、これは希少な自然保全の成功事例、また気候変動対策に希望を与える重要な材料となるだろう」と述べています。
最も大きな回復が見られたのは東南アジアです。この地域には世界のマングローブ林のおよそ3分の1が存在しており、2010年以降だけで1,000平方キロメートル以上増加したことが確認されました。さらに、アジアの他地域、南米、中東でも回復の兆しが見られています。
回復の要因は地域ごとに異なりますが、多くの場合、放棄された養殖池跡地への自然再生や、堆積物の蓄積によって海岸沿いに新たな干潟が形成されたことが背景にあると研究者らは考えています。また、各国政府や自然保護団体がマングローブの価値を再認識し、新たな植林活動を進めてきたことも回復を後押ししています。
かつてマングローブ減少が深刻だったインドネシアでは、2004年のインド洋大津波による甚大な被害をきっかけに、マングローブの重要性や再生の取り組みに対する認識が高まりました。その後、法的保護や管理体制の強化が進み、近年の回復につながったと研究者らは報告しています。
もっとも、すべてが良いニュースというわけではありません。特にアフリカでは依然として減少が続く地域があります。代表例がニジェール川デルタ地帯(Niger Delta)で、アフリカ最大のマングローブの生態系を擁していますが、近年は石油汚染による被害などの影響で森林面積が減少しています。
また、回復が見られる地域でも、過去の損失を完全には取り戻していないケースがあります。例えばミャンマーでは、2010年以降にマングローブ林が10%増加しました。しかし、1980年代と比較すると依然として29%の純減となっています。
研究者らは、マングローブが新たな土地へ急速に広がる能力を持つことから、大規模な植林事業よりも、既存の森林や干潟を形成する自然の土壌形成のメカニズムを保護することに重点を置くべきだと指摘しています。そうした環境さえ守られれば、マングローブは自らの力で広がっていくことができます。つまり、自然を再生するために人間ができる最も重要なことは、時として余計な介入をしないこと、なのかもしれません。
出典:Zhang, et. al. “Unexpected expansion and regrowth in Earth’s mangrove forests over the past four decades.” Science. June 4, 2026.
画像:Kristin Hoel on Unsplash
DATE
June 19, 2026AUTHOR
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