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将来の食料を増やすために今は漁獲を減らすというサンゴ礁回復のために抱えるジレンマ

科学者たちは、サンゴ礁漁業が1平方キロメートルあたり数千食分もの追加食料を持続可能な形で供給できる可能性があると指摘しています。しかしその実現には、すでに余裕のない地域社会からの大きな犠牲が求められます。

文:Warren Cornwall
2026年1月7日

サンゴ礁は海の穀倉とも言える存在で、人々の食卓に上る魚の多くが、こうした場所に生息しています。しかし、サンゴ礁はさらに多くの食料を生み出す可能性を秘めています。適切な管理が行われれば、サンゴ礁は栄養不良に苦しむ地域を含む、何百万人もの人々を養うのに十分な量の魚を生産できる可能性があると『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された新たな研究が示しています。

本研究の筆頭著者であり、サウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学(KAUST)に所属する海洋科学者、Jessica Zamborain-Mason氏は、「これらの結果は、効果的なサンゴ礁漁業のモニタリングと管理が、環境保全を超えた、実質的かつ測定可能な恩恵をもたらすことを改めて示している。これには食料安全保障や公衆衛生への重要な影響も含まれている」と指摘しています。

しかしこの可能性を現実のものにするのは容易ではありません。サンゴ礁は海洋熱波の影響を受けており、気候変動によって世界のサンゴの大半が脅かされていると科学者たちは警鐘を鳴らしています。さらに、多くのサンゴ礁では十分な監視体制が整っておらず、科学者や管理者といった規制インフラが不足しています。そしておそらく何より課題になるのは、人々が日々の生活を支えるために漁業に依存している地域において、漁業を制限することが難しいことです。

本研究に携わったスミソニアン熱帯研究所の生態学者、Sean Connolly氏は、「持続可能な形で、長期的により多くの魚由来のたんぱく質を確保するために漁獲圧を減らすのであれば、短期的に生じる栄養不足を補う手段が必要になる。それが最大の課題だと思う」と述べています。

現在のサンゴ礁の生産量と潜在的な生産量との差を推定するため、研究チームは世界各地のサンゴ礁における漁業生産性のモデルを構築しました。このモデルは、2,000か所を超える地点で実施された調査データに基づいています。そのうち150か所は、保護区に指定されている、あるいは人が居住していない遠隔地のサンゴ礁で、漁業の影響を受けていない特定の種類のサンゴ礁にどれだけの魚が生息するのかを示す基準点として用いられました。

これらのサンゴ礁を持続可能な形で管理した場合に、収穫可能な魚の最大量を算定するため、研究者たちは広く用いられている指標を採用しました。漁業者が漁獲してよい量は、手つかずのサンゴ礁に存在するバイオマス(生物量)の半分を超えてはならないというものです。この50%という基準を下回るバイオマスの状態は、過剰漁獲とみなされました。

計算の結果、適切に管理された漁業において本来海中に存在すべき魚の量と、実際に存在している魚の量との間に、多くの地域で大きな隔たりがあることが明らかになりました。特に深刻な例として、ケニア、モーリシャス、オマーンのサンゴ礁では、魚のバイオマスが本来の10%未満しか確認されないケースもありました。しかし、こうした状況は例外ではありません。研究者たちによれば、世界の過剰漁獲されたサンゴ礁では、持続可能な範囲で最大漁獲量まで漁獲した場合に生息し得る魚の量と比べて、平均で32%の魚不足が生じていると報告されています。

Zamborain-Mason氏は、「本研究は、サンゴ礁の魚類群集が過剰漁獲の状態にあることで、食料供給の観点からどれほどの損失が生じているのか、そして逆に、魚類資源を回復させ、持続可能な水準で管理することで、どれほどの利益が得られるのかを定量的に示している」と述べています。

もしこれらすべての漁業資源が回復できれば、追加で得られる魚は、サンゴ礁1平方キロメートルあたり実に9,000食分に相当すると研究者たちは発見しました。その恩恵の多くは、飢餓の水準が高い開発途上国でもたらされるとされています。例えばインドネシアでは、約140万人が推奨される量の魚を食生活に取り入れられるようになります。フィリピンでは80万人以上、タンザニアでは50万人以上が、同様の恩恵を受けることになります。

Connolly氏は、「栄養不良指数が高い国ほど、回復したサンゴ礁の魚類資源からより大きな恩恵を受ける可能性がある」と述べています。

しかし、こうした試算を現実のものにするには、長年にわたる慎重な管理と、人々の現在の暮らしにおいて変化が必要になります。最も厳格な規制、すなわち禁漁を導入した場合でも、サンゴ礁が回復するまでの中央値は6年とされています。一方、より慎重な管理手法では、中央値でおよそ50年近くを要します。特に深刻な打撃を受けた地域では、回復までに最大70年かかる可能性もあります。しかもこれは、サンゴの死滅による生息地の喪失が、魚類の生産性をさらに低下させる影響を考慮していない場合の話です。

こうした対策は、人々の生活様式に大きな変化を強いる可能性があります。研究者たちは具体的な改革案までは示していませんが、漁獲量の削減は、農業などの代替的な食料生産と組み合わせて進める必要があると指摘しています。利用可能な土地が限られている小島嶼国などでは、別の水産物を確保したり、海外から食料を輸入したりすることが求められる可能性もあります。

言い換えれば、サンゴ礁漁業をより持続可能で、かつ生産的なものにするという考え方自体は魅力的ですが、それを実現することは極めて困難な課題になり得るということです。

出典:Zamborain-Mason, et. al. “Potential yield and food provisioning gains from rebuilding the world’s coral reef fish stocks.” Proceedings of the National Academy of Sciences. Dec. 16, 2025.
画像:Filip Milovac/WorldFish via Flickr