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大気中のマイクロプラスチックが気候に与える影響を探る初の研究

マイクロプラスチックは、太陽光を散乱させて冷却させる一方で、放射線を吸収して温暖化に寄与するという、少し複雑な性質を持っている

文: Prachi Patel
2011年10月21日
(Click here for the English version)

プラスチックは陸や海を汚染しているだけでなく、私たちが呼吸する大気中にも存在しています。微小なプラスチックの破片は、地表から大気中に舞い上がり、地球を駆け巡り、世界各地に降り注いでいます。

では、この大気中のマイクロプラスチックは気候にどのような影響を与えるのでしょうか。この問題に取り組んだ最初の研究は、これが少し複雑なものであることを証明しています。今のところ、マイクロプラスチックは気候にごくわずかな冷却効果を与えていると研究者らは学術誌Natureで報告しています。しかし、特に大気中のマイクロプラスチックの密度が高くなると、その影響は逆転し、地球を温暖化させる可能性があるとのことです。

粒子の種類や大気中の分布状況によっても大きく異なります。ニュージーランドのカンタベリー大学の大気科学者であるLaura Revell氏は、大気中のマイクロプラスチックの研究はまだ新しいので、正確な分析を行うには十分なデータがないと指摘しています。

Revell氏の研究は、マイクロプラスチックがどのように地球上で広がっていくのか、より詳しく理解する必要があることを示しています。また、プラスチックの生産量が増加し、それに伴ってプラスチックによる大気汚染が進むと、気候へ悪影響がある可能性を指摘しています。

Revell氏は「マイクロプラスチックが地球の気候に与える影響は、現在のところ非常に小さいと言われているが、今後は増加することが予想される。私たちが人類としてマイクロプラスチックによる汚染、プラスチックの生産や廃棄物管理の方法に真剣に取り組まない限り、マイクロプラスチックの量は増え続け、大気中のマイクロプラスチックが将来の気候変動に影響する可能性がある」と言います。

大気中に存在する塵や海水の凝縮物、煤などの微小な物質の粒子は地球の気候に影響を与えることが知られています。冷却や温暖化の影響は、エアロゾル粒子の大きさ、形状、組成、大気や地表の状態によって異なります。「ほとんどのエアロゾルは、小さなディスコボールのような働きをして、太陽光を宇宙に反射する」とRevell氏は言います。

しかし、マイクロプラスチックが大気中でどのように振る舞うかについては、ほとんど分かっていません。Revell氏はさらに「一般的に、大気中のマイクロプラスチックは太陽光を効率的に散乱させるため冷却効果があると考えられるが、地球から放出される放射線を吸収することもできるので、ごくわずかながら温室効果に貢献していることになる」と指摘しています。

マイクロプラスチックの気候への影響を測定するため、Revell氏らはまず、マイクロプラスチックの中でも最も一般的な形状である無色のプラスチック片と繊維の光学特性を計算しました。そして、これらの光学特性を大気中の粒子の分布に関するさまざまな仮定のもと、一般的な気候モデルに組み込みました。

1立方メートルあたり1個のマイクロプラスチック粒子を高度10kmまで一様に分布させた場合、モデルはごくわずかな温暖化効果を示しました。しかし、マイクロプラスチックが地表から2kmまでしか存在しないと仮定すると、粒子が下層大気で太陽放射を散乱させるため、冷却効果があることがわかりました。

もちろん、これらの仮定は全体像を表しているわけではありません。まず、マイクロプラスチックにはさまざまな形や大きさ、色があり、それが放射線の反射や吸収に影響を与えます。さらに、マイクロプラスチックの分布は、測定する場所によって大きく異なります。例えば、西太平洋の上空では空気1立方メートルあたり0.01個の粒子であるのに対し、北京では5,650個にもなります。

研究者らは、大気中のマイクロプラスチックの分布をより詳しく理解するために、都市部や遠隔地でのフィールド調査をさらに進める必要があると指摘しています。また、マイクロプラスチックの濃度が高い都市環境では、酷暑を引き起こすことなど、マイクロプラスチックが地域の気候にどのような影響を与えているかどうかを評価する研究も必要であると指摘しています。

出典: Laura E. Revell et al. Direct radiative effects of airborne microplastics. Nature, 2021.