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世界初の地図が作物残渣からのバイオ炭が約5億1,000万トンの炭素を閉じ込められることを示す

これは研究者たちの控えめな見積もりです。

文: Emma Bryce
2023年11月17日

世界中の何千もの農地に散在する作物残渣は、気候変動に対する思いがけない秘密兵器になるかもしれません。これらの残渣の殻、根、葉を、炭素を閉じ込めることが出来るバイオ炭に変えることで、今後100年間、地球全体の温室効果ガス排出量の3~7%を封じ込めることができます。

最近の新しい研究によるこの驚くべき発見は、実際、再利用された作物残渣が秘めている可能性が非常に強力であることを示しており、ブータン、インド、ガーナなどの国々は、現在の温室効果ガス排出量の40%以上をバイオ炭で埋め合わせることができることを示しています。

作物残渣の多くは、農地に放置され分解されるか、焼却されて大気中に排出されます。しかし、この原料をバイオ炭に変える技術は存在します。それは熱分解(有機物を高熱で酸素を制限した状態で燃焼させ、炭素が豊富な炭のような残渣を作るプロセス)です。作物残渣は熱分解されると新鮮な植物が腐る時よりも長い期間炭素を封じ込めることができます。そして、バイオ炭を土壌に混ぜると、さらに数十年にわたって炭素を封じ込めることができるのです。

小規模なスケールでバイオ炭の可能性は多くの研究によって示されてきましたが、産業規模で生産される世界中の農業廃棄物の可能性はこれまで明らかになっていませんでした。GCB Bioenergy誌に寄稿した研究チームは、国際的な農作物生産に関する大規模なデータセットを基に分析を行い、農業残渣の世界地図を高解像度で作成しました。研究チームは、バイオ炭にすることができる残渣を作り出す34の作物について調査しました。その中には麦わら、籾殻、果物の皮まで含まれています。

もし残渣をすべて活用し、バイオ炭に変えたとしたら、可能性は非常に大きなものになります。研究者らは、このような農業廃棄物を利用すれば、毎年10億トンの炭素を土壌に固定できると見積もっています。バイオ炭は、その土地の気候の暑さ(より速くなる)や涼しさ(より遅くなる)によって分解速度が異なります。こうした変数を考慮し、科学者らは、10億トンのうち72%は100年後も土壌に固定されると結論付けました。驚くべきことに、これは2019年における世界の農業による総排出量の45%に相当する量であると研究によりわかったのです。

しかし現実には、農業残渣の大部分は、ただそこにあるだけではなく、収穫時に失われたり、家畜の飼料や敷料に使われたりしています。バイオ炭の潜在的な炭素固定化能力は、このような現実を考慮すると、年間約5億1,000万トンまで減少することがわかりました。

これは急減のように見えるかもしれませんが、それでも膨大な量であることに変わりありません。バイオ炭の可能性は国別のデータでよく見えてきます。

例えば、ブータンが利用可能な作物残渣をバイオ炭に転換すれば、国内排出量の68%に相当する量を固定化することができます。世界第3位の排出国であるインドでは53%、ガーナでは44%、ブルガリアでは39%、ルワンダでは3分の1以上に相当する量が固定できます。

つまり、温室効果ガスの排出量を削減するための国家対策として、あるいは世界的な気候目標に向けた各国の国別貢献の一環として、バイオ炭は明確な可能性を秘めています。

研究者らの控えめな試算によれば、地球規模では、使われなければ燃やされてしまうかもしれない広く利用可能な資源を使うこのアプローチひとつで、世界全体の排出量の少なくとも3%を抑制することができます。

バイオ炭の分解速度に関する利用可能なモデリングは時間が経つにつれて不確実性が増すため、研究者らは100年以上にわたる農業土壌でのバイオ炭の状態には不確実性があることに注意を促しています。さらに、バイオ炭の製造に使われる熱分解法はエネルギー効率が改善しているものの、非常にエネルギー集約的な方法です。

一方、バイオ炭には、農作物を育てる土壌の性質を改善するという利点もあります。また、植林のような他の大規模な炭素隔離アプローチとは異なり、バイオ炭は広大な土地を新たに確保する必要はありません。

過剰な二酸化炭素を削減することが急務だと研究者らは指摘します。 「農作物の残渣からバイオ炭を作ることは、土地を奪い合うことなく、二酸化炭素の排出量を大規模に削減できる数少ない手段のひとつだ」と言っています。

出典:Woolf et. al. “Potential for biochar carbon sequestration from crop residues: A global spatially explicit assessment.” GCB Bioenergy. 2023.